『辞めてまえ。帰ったら、人事に話を通しとくわ』
これが、例の上司から言われた一言だ。
展示会を終えて、
上司と飲むことになった。
なぜ、
こういう人種は飲むことでしか
コミュニケーションを取れないのであろうか
と疑問に思いつつ、
宿泊先の近くにある居酒屋に行くことに
なったのだ。
その1から読むにはコチラ
顔色を伺いつつ日本酒をトクトクとそそぎ、
乾杯する。
女の話、下ネタ、車の話、野球の話などをされたが、
どれもとてもじゃないけど、
興味がなく、
ついていくことができなかった。
それに下衆な話だなぁとも内心思っていた。
しかし、なんとか興味のあるふりをして
頑張っていたつもりりである。
すると上司は突然、首をかしげ始めた。
私が『どうかしたんですか?』
と聞くと
また、何も言わず、首をかしげる。
私が、『どうしたんですか?
言ってくださいよ。言わないと何も分からないですよ』
と聞くと、
『お前は、だめだ。つまらん。
話が合わないし、女の話もできない。
コミュニケーション能力もない。』
と言うのだ。
『は?』
それだけなら、よかった。
『辞めてまえ。帰ったら、
人事に話を通しとくわ』
とも言われた。
そこから、
上司は私がどれだけ
部署内で嫌われているかを
詳細に話をしてくれた。
どれだけ、、
浮いているかを
話をしてくれた。
私が、どれだけ
マナーがなっていないとか
非常識だとか、
どこの誰かから聞いたかは
分からない情報だが、
話してくれた。
『そういうことは、
普通に暮らしていればできることだ。
もういっぺん人生を
やり直した方が良い』
とも言われてしまった。
ある程度、
想像はついていたけど、
それを言葉で直接言われてしまった
そして、社会通念上、
そのとうな人を傷つけるようなことは
言わないのが常識だと思っていたが、
言われてしまった。
心臓が抉り取られるような思いだ。
ショックを受けたまま
宿に戻ると
会社内で私の居場所は
どこにもないと悟り、
一睡もできないまま、
しくしくと泣いた。
そして、
あらゆる不安が、心のそこから黒くうごめいてきて
これから、どう生きていこうか?
と思ったが、選択肢がなかった。
正直に言って、
楽に死ねるものなら、死んでしまいたかった。
それにもかかわらず、
会社を辞めるということも
できなかった。
当時の私にとって
会社をやめる=収入がなくなる=死
だったのである。
あんなヒドイ仕打ちをうけても
生きるために、会社に残り
自分の『人間としての尊厳を失った死んだ人生』を
歩まなければいけないのである。
生きるために、死ぬとは、なんとも皮肉である。
そして、次の日。
『昨日は酔った勢いで言いすぎたわ!
ごめんな!』
酔ってたからしょうがないと
簡単に言えてしまうなんて、
なんとも非常識なのだろうか。
しかし。
私は一言も言い返すことができなかった。
すっかり昨夜に言われたことで、
すっかり怯えた飼い犬のように
なってしまったのだ。
普段は周りが私のことを
どう思うか気にしないで自由に自分らしく
生きてきたが、
それからというもの、
社内で人に近づくのが
怖くなってしまった。
人に近づくと、
針のように突き刺すような
プレッシャーを感じるようになったのだ。
『この人も私のことを、嫌っているのだろうか?』
このようになると、
もう怯えたように暮らすしか
できなくなってしまった。
会社で生きていくには人の目を気にする
サラリーマン的なコミュニケーションが
できないといけないのだ。
自由に生きることなど到底できない。
仕事ができず、結果が出ずに苦しむのなら
まだ、納得ができる。
しかし、私というプライドは組織という大きなものに
握りつぶされてしまった。
朝起きるのもつらく、
ベッドから出るのもつらい
心臓とみぞおちの間あたりが
『キューッ』と絞られるように痛いのだ。
しかし、会社にはいかなければいけない。
朝スムーズにベッドから出れるように
いろんなことを試した。
テンションの上がる曲をかけて、
無理やり気分を高揚させたり、
気分が明るくなるような
自己啓発系の有名人の言葉なんかを
読んだりした。
そして、一番効果的だったのは
オナニーである。
オナニーをすると
脳内物質のドーパミンが分泌されて
ストレスが軽減されるらしい。
たしかに
心臓の締め付けるような痛みは
和らいで、一瞬でも勇気が湧いてくるのだ。
オナニーをして勇気が湧いた瞬間にベッドをでて、
ワイシャツのボタンをポチポチととめて
会社に行く準備をする。
そして、アパートのドアをガチャンと開け
今日も、私の大切な心臓を
針のじゅうたんの上に転がしにいくのだ。
ごめんよ。
数ヶ月後、
私に物流センターへの異動が
言い渡された。
例の上司がいろいろと画策したのであろう。
屈辱的ではあったが、
内心では今の人間関係から
解放されると考えると、
ほっとした。
しかし、それは
別の種類の地獄への始まりでしかなかった。
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